白い巨塔あらすじとレビュー

白い巨塔
おすすめ度(★★★★★★★★★☆:9点)
ネタばれなしのあらすじ
財前、里見という二人の、考え方、信念の違う医者の対比を、財前側の視点に立って描いた作品である。財前は地位と名誉を求め、大学医学部の権力争いをギリギリのところで戦ってゆく。大学医学部で財前と同期だった里見は財前とは正反対の性格で、人の心に寄り添う医者であり、私利私欲よりも患者を、人を最優先に考える医者であった。その信念の強さに、財前はいつも里見を意識せざるを得なかった。どちらの生き方がよいのか正解はない。ただ、財前、里見ともに両者の異なる強い信念に、関係する人物はおのおの心を動かされ、前へと突き動かされてゆく。。。

見どころ
医者の世界における国立大学医学部教授という地位と名誉の高さを描写し、それを得るために手段を選ばない財前の達成できるかギリギリのところでの攻防に引き込まれる。

個人的な感想(ネタばれあり)
個人的に感じたのは、財前、里見とも方向性は違えども、自分の生き方にゆるぎない信念があり、それに突き進んでいく人は、周囲の人を巻き込んで影響を与えていくというのを感じる。どちらも犠牲にしているものがあり、結果的に、財前は信頼できる友と自らの命を、里見は家庭がその対象となっているが、改めて今の自分ならどちらを選択するかとなったときの選択は難しいと思う。ただ、やはり生きるうえで自分がとるべき行動を自ら考えて選択する、というのは必要なことであり、選択を他人に委ねてはいけないと思う。他人が選択したことは失敗したときに他者のせいにしたくなるし、後悔もつきまとう。全力で立ち向かい、考えたからこそ、その結果がどのようになったとしても心の整理がつく。やはり、信念、目標を持つというのは、生きるうえで重要なことと思う。死ぬときに、自分でいてよかった、と思える生き方をしたい。
もう一つ感じるのは、生きる、ということには中庸の概念が存在するのではないか、ということだ。人が人生で得られる感情やモノはすべてをあわせればあるラインに自然と集まっていき、何かを得るためには何かを失わなければならないのではないかと思う。それが努力にかけた労力と時間であれば健全だと思うが、自ら代償を払わずに利益を望むと、そのバランスをとるために自然と自分の大切なものをむしり取られてしまう。財前も里見も、人生の流れでいえば踏み入れにくい領域だったところを、本人の意思で進んだ。財前は東教授と確執がある関係性にしたうえで、東教授が後継者選定に対して多くの決定権を持つ教授の椅子を欲した。自らは東教授の思うように動かないという選択を普段の行動でしたうえで、その人が持っているものを欲するわけだから、失うものも多くなる。里見は真実を追い求めるあまり、患者の側に立って裁判で証言するという、組織が向いている方向とは異なる行動をとった。組織にいるうえで、組織に被害を加えるものはたたかれる。
二人の生き方を見て感じるのは、本人の基準は揺るがないから、たとえ失うものがあったとしても、後悔していないということだろう。他者の意見で自分自身の考え方、得たいことが揺れてしまうことも往々にしてあるが、自らの信念が変わってないから、その行動に後悔はない。

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